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ピストンが往復運動をするレシプロエンジンと呼ばれるエンジンの世界では、ガスを燃料に利用していた歴史は古く、ガスエンジンの技術はすでに確立されている。 いま、実用化されている圧縮天然ガスエンジンは、既存のガソリンエンジン、ディーゼルエンジンのシリンダーブロックまわりをそのまま利用し、プラグ点火システム、気化器(キャブレター)を、空気に気体の天然ガスを混入する器械と置き換えるか、電子制御式天然ガス噴射装置を装着している。
電子式を別にするとこの技術は基本的に一世紀前のガス燃料機関とまったく変わりはない。 天然ガスエンジンの熱効率を上げる方法は、常識的にはシリンダー(筒)内に天然ガスを瞬間的に直接噴射し、補助的にプラグ点火を併用することである。
そうせずに、熱効率をアップするために圧縮比だけを高めていくともピストンが上がりきらないうちに混合気の高熱化のために異常着火のノッキングを起こすことになる。 最新型のガソリンエンジンでは、こうした筒内直噴式のシステムが実用化され、低燃費化と高出力とを両立させている。
ディーゼルエンジンの熱効率が優れているのは頑丈なエンジンで空気だけを高い気圧に圧縮し、そこに燃料を直接的に噴射するからであり、それが可能なのは軽油、重油の燃料がネバネパとして粘性、潤滑性がありも高度に複雑な圧縮装置の潤滑機構に燃料をそのまま利用可能だからである。 最新型の筒内直噴式ガソリンエンジンは、粘性の少ないガソリンでこの圧縮装置を実現したことに意義がある。

しかし天然ガスには燃料噴射装置の圧力系のパーツを潤滑する潤滑性は全然ない。 また激しい気流の中で点火プラグの近傍に空気と天然ガスの適正な混合気を形成させることはきわめて難しいのである。
軽油や重油の飛沫のように筒内を飛んで行くことはできない。 これまで政府のプロジェクトとして、簡内直噴式天然ガスエンジンの研究開発も進められたが現時点では実用化はしていない。
天然ガスエンジンが熟効率面で有利なのは、ガソリンのオクタン価(ノーマルなガソリンは85程度)にしてI30程度と高いため、ノッキングを起こしにくくガソリンエンジンよりも高圧化することができることである。 天然ガスは気体だから、どうしてもかさばってしまう。
自動車は現在大臣認定を受け、路上走行試験中である。 液体のまま使うことができれば燃料タンクは小さくすることができるのだが、そのためにはタンクを超低温タンクにしなければならず、ごく一般的な商品とするためには、圧縮タンクよりはるかに難しいのである。
圧縮タンクには、二〇〇気圧に高圧縮した天然ガスが充填される。 タンクの素材としては、宇宙ロケットにも利用されるようなハイテク複合素材も実用化されている。
たいへんに軽く、少女でも持ち上げることが出来るほど。 しかし製造コストを考えると鋼鉄製のタンクに合理性があるかも知れない。
圧縮天然ガス自動車を実用化するためには、こうしたタンクの技術開発よりも法的な規制緩和のほうが困難なテーマであった。 高圧タンクについては非常に厳格な規制がある。

しかし現在、天然ガス自動車にかぎってはその利用面の法的障害はほぼクリアされてきた。 また安全とされているが、安全性については永遠のテーマとして認識しておくことが大切である。
たしかに自動車の排ガスをクリーンにしてゆくことは大切なことだし、大都市や、幹線道路沿いの住民などから強く求められている。 しかし自動車の一部でもいいから、天然ガスを燃料として利用できるように準備しておこうという努力には、エネルギー多様化による安全保障の推進という戦略的な目的が天然ガス自動車プロジェクトの当初から強く作用していた。
この辺りの戦後史的なストーリーについては、本文中で語りたい。 二〇〇一年九月十盲以来、ハンテントン教授の「文明の衝突」論は恐怖の学説となった。
ハンテントン氏がTV局のインタビューでアメリカ中枢同時テロは「文明の衝突」ではないと語らなければならないと考えさせたほどその学説が西欧文明圏、イスラム文明圏の国々に与える恐怖感は大きかった。 「この報復戦争は二十一世紀の十字軍」と、ブッシュ大統韻は口をすべらせてしまい、イスラム圏の反発をあおらないようにと、あとあとまでその発言を取り繕うことに苦労することになるのだが、こうした意識が大統領の心の奥底に潜むホンネであることはほとんど間違いないはずなのである。
西欧文明対イスラム文明の衝突の構図の存在は否定しようもなく、「文明の衝突ではない」と希望的に否定したらもそれで文明の衝突でなくなるわけではない。 また、報復は報復を呼ぶと語る平和主義者たち″の主張には、衝突は避けられないという衝突論を前提にしているという自己矛盾がある。
なぜなら、ただの邪悪な集団の犯罪行為なら、それを排除してしまえば歴史的な事件として終わってしまうはずだからであり、際限のない報復と報復がつづくという主張の裏側にはイスラム文明を底なし沼のような恐怖とみなしている観念論的な意識が存在しているからである。 記者自身は、九月十一日のテロを実行した集団は歴史的に強力なプロフェッショナル集団であって、そうはかんたんにあとにつづくテロ集団は登場できないとするのが常識的ではないかと考えているのだが、十年単位で近未来史をみれば、西欧文明対イスラム文明の確執、乱鞍、紛争が消滅することもまたありえない、すなわち文明の衝突は存在すると考えている。
しかし日本にとっての最大の問題は、危険な文明の衝突が日本文明対中華文明の構図として発生することなのである。 著者としては、現実論としてキリスト・ユダヤ教文明世界と狂信的イスラム復古主義集団との衝突、中華文明の台頭とその周辺文明諸国との衝突、また「原発文明」の技術的リスクなどが二十一世紀の前半に、ひたひたとその風圧を高め、暴発をくり返すものと予想している。
そしてそのいずれもが過度に中東に依存している日本の石油文明に痛撃を見る危険性が高いことを指摘しなければならないのである。 キリスト・ユダヤ教文明対狂信的イスラム復古主義者集団との激突事件で、前者のアメリカ連合側が国際テロ集団に反撃を試みるケースでは、前者が二つの宗教文明圏の戦いではないといくら強く主張したとしても後者にとっては二つの宗教文明圏の衝突、戦いとしての色合いが濃厚なのである。

新聞報道などで使われているイスラム復興主義については、イスラム教原理主義から原理主義とも言われるが、復古主義というのがより正確である。 それでなくても第二次大戦以降、多くの戦争の原因が石油権益の確保にあった。
そうした現代産業文明の姿と自動車文明のエネルギー構造は依然、まったく変わってはいない。 そして今、自動車燃料としての石油資源確保、争奪の圧力は日増しに強くなってきている。
そしてまた決して極論ではなく、国の経済安全保障が瓦解して戦争が勃発したとき、それによる破壊行為は、それまで営々と進められてきた環境保全の努力を一瞬にして灰蛙に帰さしめてしまうのである。 石油代替燃料としての天然ガス利用の戦略的、長期的な目的は正にこの点にあるはずなのだ。

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